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なんなんだよ…聖杯戦争って…… この言葉を一体何度繰り返したのだろうか。 しかし、直保はその回数はとっくに忘れてしまったし 溜息の数も両手では収まり切れなかった。 何よりもここは彼がかつていた場所――農大ではないのだから…… 沢木惣右衛門直保―― 長いので沢木直保と省略する。 彼は聖杯戦争に巻き込まれてしまったのである。 何故?かと言えば思い出せない。 月の石とやらにも心当たりない。 もしかしたら、彼の先輩たちがうさんくさい高価な石だと紹介したあの石…だったかもしれない。 何にしても故意ではないのだ。 彼は魔術師じゃない。 かといってタダの人間でもなかった。 直保には「肉眼で菌の姿を捉える」能力がある。 掴むことも出来るし、少々くらいは操ることも出来る。 だけどもそれだけ。 もしかしたら、自分の能力が魔術的なものなのかもしれないが 逆に嬉しくも何ともない。むしろ迷惑だ。 何故、このような戦争に巻き込まれてしまったのだろう。 さらに巻き込まれただけならともかく 農大ではない、全く見知らぬ地に移されてしまったのも迷惑極まりなかった。 直保は友人たちや先生たちの心配もそうだが 果たして自分は元の場所へ帰ることができるのだろうか…? 「大丈夫大丈夫!なんとかなるってー」 そう呑気に声をかけてくるのは直保のサーヴァント・キャスターである。 戦争に参加するのに何が大丈夫で、なんとかなるのか。 直保は困り果てていた。 「そんな顔すんなよ、提督ぅ~これでもあたし、結構活躍できるんだぜー!」 「違う……俺は好きで参加した訳じゃないんだ…」 悲壮に溢れる言葉を漏らすが キャスターはヘラヘラとした態度で軽く受け流した。 「そりゃあ、仕方ないね~」 「仕方ないって―――」 「たまーにそういうのあるんだよ。聖杯戦争ってさー それに今回はあたしらだけじゃないんだ。皆と頑張ればなんとかなるなる!!」 確かに今回の聖杯戦争は 月と地球 二つの陣営に分かれ戦うのだ。仲間がすでにいる状況だ。 ルールを聞いている直保は分かっているものの、また溜息をつく。 「それよりさー提督、酒作ってるんだろ? あたし、それ飲みたいなぁ~今度飲ませてくれよ~」 「酒だって、農大に帰らなきゃないだろ…」 「じゃあ一緒に帰って飲もうぜー!」 ノリで話している気がしなくもないが キャスターの提案に直保は少し間を開けてから 「……そうだな。皆のところへ帰ろう」 少しだけ頬笑み答えた。 ちゃんと生きて帰ろう。 そんでもって宴でも何でもいい、皆で酒を飲み明かそう。
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163 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:夜間屋内戦] 投稿日: 2007/01/22(月) 04 15 45 伏せ姿勢から立ち上がる事なんてできはしない。 元より脆いと言うことを差し引いても、遮蔽物を簡単に撃ち抜いて飛び去るその弾丸は身体のどこに当たろうとその部位を吹き飛ばすことになるだろう。 そんな予感があったから、立ち上がることなく、匍匐状態のまま部屋の外を目指す。 部屋の外から気付かれることなく接近しなければならない。 拳銃があるとはいえ、機関銃と比べれば火力は著しく落ちる。 理想型を言えば、零距離から一撃で心臓を撃ち抜く事。 一撃で倒し、反撃の隙を与えないことだ。 ……自分に出来るか? もう一度、誰かを殺すことが出来るか? 首を振り、考えを打ち消す。 「……できるさ」 自分に言い聞かせ、手にした拳銃を握り直す。 次々と手元の銃から弾丸が発射され薬莢が落ち、目の前の遮蔽物に穴が開いていく。 反撃はない。 倒したのか? ……その保証はない。 糸のトラップには引っかからず、その真上に設置された赤外線のトラップには引っかかった。 つまりまず間違いなくその瞬間までは生きていた。 ……右手を失ったのは痛い。 出血は止まっているし、発砲動作そのものに支障はないが、二挺装備は不可能となった。 義手にしたとしても、恐らく元に戻ることはあるまい。 「聖杯に望むことが増えた、な……」 己の望み、『完璧なる存在』になるために、欠け落ちた部分は存在してはならない。 その為に聖杯を望み、願う為に銃火器の取り扱いにも精通したし、魔術の鍛錬も怠らずに続けてきた。 だが右手は切り落とされた。 近接戦闘の技術は未習得だった。 バーサーカーで敵サーヴァントを分断し、防御魔術で防御しつつ敵マスターをトラップと銃火器で攻撃する。 それが彼の想定した必勝となるはずの戦術であった。 だが接近され、右手から切り落とされた。 「実戦経験の差、か……」 防御魔術の突破はしえないようだが、魔術の解除から攻撃、再展開の間に攻撃された。 数度、いや、それ以上の実戦経験があると言うことだろう。 そしてこの必勝戦術を試すのは今夜が初めて。 人寄せの魔術は既に停止し、己の内に魔術を溜めておく。 ちらりと机に立てかけられた銃器に目を向ける。 M16A2。 米軍で正式採用される信頼性の高いアサルトライフル。 今夜このビルに運び込んだ武装はこれで全て。 「確実に殺しきる……!」 完全なる殺意を込めて、隣室へ向けて途切れ途切れに弾幕を張る。 それでも、ベルト給弾式のMG3の弾丸が切れるまであと一分もない。 廊下に出て、発射元を探る。 発砲音が連続してに聞こえてくるので探り当てるのは比較的簡単だった。 「……いた」 ちらりと覗き見ると、左腕で引き金を絞り、先程まで居た部屋へ、今となっては明後日の方向に向けて乱射を続ける男が見えた。 瓦礫が変な風に邪魔をしている上、瓦礫の山を越えてしまえば敵まで障害物はない。 恐らく敵までは30メートル前後。 そして気付かれれば恐らくやられる。 ……ここから拳銃で狙撃する。 頭を狙えば恐らく必殺だろうが、扱ったことのない拳銃という武器で小さい頭部に当てられるかは分からない。 攻撃手段を奪うという意味では残った左腕だろうが、否定要素は頭部に同じ。 だとすれば狙うのは胴体か? 胴体を狙えば恐らく当たるだろうが倒せるかと言われれば恐らく否、だろう。 それに、足下には予備の物である火器が置かれている。 持ち運びを前提にして居るであろうサイズの火器を壁に向けて撃つことはないだろう。 ……恐らくチャンスは一度。 伏せ撃ち体勢ならば命中精度が上がるだろうが、外して気付かれれば次の動作に移るまでに時間がかかる。 立ったままでは次の動作に移るまでの時間は最速だが、肝心の命中精度は下がるだろう。 折衷案は膝立ち姿勢で、中途半端かもしれないが、即応も取れると言う意味では重要かもしれない。 少し痺れの取れた左手を添え、狙いをつける。 ダブルクロス 1:立ち撃ちの姿勢で―― 2:膝立ちの姿勢で―― 3:伏せ撃ちの体勢で―― A:頭部を狙う―― B:左手を狙う―― C:胴体を狙う―― 投票結果 1 0 2 5 3 3 A 1 B 2 C 5 結果:膝立ちの姿勢で胴体を狙う
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861 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2008/03/06(木) 04 31 00 「一度退くのが賢明ですわね」 決断までの時間は極々短いもの。 既に異常繁茂した半ばまで破れていた窓に体当たりし、そのまま外へと跳び出す。 常人ならば足を折り、命さえも危うい突破口。 しかし彼女は魔術師であり、それに仕えるのは英霊として人外の域に置かれた存在である。 跳び出すと同時に着地地点を視認し、気流、質量を操作し着地に備える。 「これを選んだということは、下のアレをどうにかするのを優先する、と言うことで良いんだな?」 同様に着地したジェネラルが自らが跳び出した地点へ向けて連べ打ちを行い、数人を撃ち抜くと共に残り全ての頭を下げさせる。 「ええ、上の敵、情報は得られたのでしょう?」 「一応、おおまかなところはな」 それを使って有効な手だてが立てられているわけではないが、戦闘能力については大凡収集できている。 前後から現れた男女についての情報は特に得られていないが、追撃が無い事から判断して大きな戦闘能力は無い物と判断する。 「それで十分、とは言いませんが……」 着地し、僅かに残る衝撃を前方宙返りで逃し、砲火の先の敵を見据える。 「今は完全に未知のこちらに集中しましょう」 「とはいえ、どう攻めるね? 銃砲撃の類でダメージは与えられているようだが……あの調子だぞ」 ドロドロとカラダから崩れて落ちた液体がスライムのように蠢き元の姿に戻っていく。 「本格的に不気味ですわね……」 不快さを隠す事もせず、だが冷静に見据える。 小銃の銃弾を幾度となく受け、それでも止まることなく砲座へ突撃し破壊する。 そこには驚異を排除する、と言う本能だけでなくどこか意思のような物を感じ取れた。 「見たところ無差別破壊をしているわけでは無い……だとすれば司令塔があるのではなくて?」 例えるならば、前面に展開させた兵士にとってのジェネラルのように。 「だとすれば中央の『女王蟻』、そう名付けることにするが、あれがそうなのではないか?」 「残骸を食べ散らかす異形に知恵があるとは思えませんわ、その他の小物も同じ」 「……なるほど、アレは命令をこなすだけであとは暴れ食し繁殖するだけの存在と言うことか」 それは理性的な思考ではなかったが、感情的にはジェネラルも同意してしまうに十分な異形だった。 「それが正しいとすれば命令は極めて大雑把な代物で……あれを操る魔術師が居る、と言うことになるか」 周囲を見渡してみるが、それらしき存在は視認できない。 それは必然である。 どこからでも見られるような場所に居るとすれば狙撃の危険があるし、そもそもわざわざ戦力から離れるとは思えない。 そして周囲の灯りと呼べる物は街灯以外には月明かり程度で、遠距離からの視認は不可能ではないが難しいだろう。 「暗視装置の類でないとすればあとは魔術と……」 ジェネラルが言葉に詰まる。 「まさかさっきの連中に隠れていたか?」 仮説が正しい物として操作、という点に関して言えば上の敵と下の敵は同一の物だ。 操られた振りをすることも不可能ではないだろうし、『自らを他人のように操る』ないし他人と同時に操ることも可能かもしれない。 可否の判断は置くとして、そうだとすれば外見から判断することは完全に不可能と言うことになる。 「確かにそれは可能でしょうが……そう言った類の魔術を好む魔術師が居るとは思えませんわ」 魔術師は自我を強く持つ。 それは彼女自身がそうだったし、彼女の知る全ての魔術師が自我を優先していた。 それが例え一時的であり、手綱を自らが握っているとしても『操る』魔術の対象を自分とするとは思えなかった。 しかし、それでもその可能性を捨てず、ビルへと振り返る。 その途中、視界の隅になにかが映った。 「あれは……」 動いてしまった焦点を視界の隅であった場所に向ける。 見えたのは―― 月:座した影だ 星:空に飛ぶ影だ 闇:跳躍する影だ 投票結果 月:2 星:5 闇:0
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【オープニング】 No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 OP 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 魔人アーチャー(織田信長) 不明 開幕前 ◆devil5UFgA OP カイン&魔人アーチャー カイン(直哉)、魔人アーチャー(織田信長) 聖杯内部 本格開始前 ◆devil5UFgA 【登場話】 No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 -022 高坂穂乃果&セイバー 高坂穂乃果、セイバー(アマテラス) ◆.OfI.CoB/2 -021 神の摂理に挑む者達 鹿狩雅孝、セイバー(カーズ) ◆yy7mpGr1KA -020 南ことり&アーチャー 南ことり、アーチャー(ヴィンセント・ヴァレンタイン) ◆devil5UFgA -019 羽藤桂&アーチャー 羽藤桂、アーチャー(白露型駆逐艦四番艦『夕立』) ◆RWOCdHNNHk -018 園田海未&ランサー 園田海未、ランサー(キュアラブリー) ◆devil5UFgA -017 アインツベルンが悪い 衛宮切嗣、ランサー(獣の槍) ◆lnFAzee5hE -016 渋谷凛&ランサー 渋谷凛、ランサー(アドルフ・ヒトラー) ◆Y0s8yQbTc2 -015 悪魔くん聖杯戦争(法) 松下一郎、ライダー(ザイン) ◆lnFAzee5hE -014 峯岸一哉&ライダー 峯岸一哉、ライダー(バビル2世) ◆devil5UFgA -013 島村卯月&ライダー 島村卯月、ライダー(マーズ) ◆HQRzDweJVY -012 宇佐見蓮子&ライダー 宇佐見蓮子、ライダー(伝説のモグラ乗り) ◆R1q13vozjY -011 マエリベリー・ハーン&ライダー マエリベリー・ハーン、ライダー(十四代目葛葉ライドウ) ◆g33OtL8Coc -010 槙島聖護&キャスター 槙島聖護、キャスター(フェイト・アーウェルンクス) ◆nEZ/7vqpVk -009 ふうまの御館&キャスター ふうまの御館、キャスター(加藤保憲) ◆devil5UFgA -008 七原秋也&キャスター 七原秋也、キャスター(操真晴人) ◆Y4Dzm5QLvo -007 狡噛慎也&アサシン 狡噛慎也、アサシン(焔) ◆arYKZxlFnw -006 ユズ・アサシン 谷川柚子、アサシン(復讐ノ牙・明智光秀) ◆Ee.E0P6Y2U -005 ジョーカー&バーサーカー ジョーカー、バーサーカー(ギーグ) ◆devil5UFgA -004 桐山和雄&ザ・ヒーロー 桐山和雄、ザ・ヒーロー(ザ・ヒーロー) ◆devil5UFgA -003 聖杯のUTSUWA リエンス王、ダッジャール(カオスヒーロー) ◆lnFAzee5hE -002 救世主の救い方 ロウ・ヒーロー、エンジェル(無道刹那) ◆TAEv0TJMEI -001 Ruler and Dominator ルーラー(シビュラシステム) ◆GOn9rNo1ts 【DAY BEFORE】 No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 000 DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 運命に挑む者達 東京 日常 ◆devil5UFgA
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【英数字】【あ行】【か行】【さ行】【た行】【な行】【は行】【ま行】【や行】【ら行】【わ・を・ん】 【予選】 方舟に召喚されたマスター達がまず潜り抜ける必要がある第一の関門。 各マスター候補は全ての記憶を奪われ、NPCとして方舟内部に再現された霊子虚構空間の中で日常生活を送ることとなる。 その過程で自分の状況に違和感を抱き、自身の存在を思い出すことが出来るか……という試練である。 記憶を取り戻すことで晴れて聖杯戦争の知識が与えられ、サーヴァントが召喚されることとなる。 なお、聖杯戦争開幕までに記憶を取り戻すことが出来なかった場合、開戦後もNPCとして生活することになる。 つまり本戦に参加したマスターから見れば普通のNPCでも、その者が元は地上の人間だったという可能性はある。
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太陽は南中し、この聖杯戦争の本選が始まって十二時間が経過した。 夜明けと共に晴れていった空は、午後になると次第に出てきた雲に青を白へと塗り替えられる。暑い日差しは段々と鳴りを潜め、冬木には暗雲が立ち込めていく。 白でもなく、黒でもなく、グレー。日を隠せど雨をもたらさない、どっちつかづかずな天気。降水確率は申し訳程度に10%。そんな天気はーーいったいこの戦いの当事者にどのような、プラスマイナス双方の影響を与えるのか。 ランサー・カルナは、隠されていく太陽を見る。彼をもってしても、天候の影響がどのように作用するかを完璧に見通すことはできない。だが、これで日差しによってマスターであるイリヤの体に障るような恐れはなくなる、それが幸運であるとは感じた。 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 暑い夏には暑い食べ物、スタミナつけなきゃ乗りきれない。こんな文句の踊る看板を表に出している郊外型スーパーの一画の丼もの屋に、マスターとサーヴァントが雁首揃えている光景はなかなか想像できないだろう。いや、正確に言えば蕎麦屋なのかもしれない。しかし看板を出すぐらい推してるのは丼だったしなおかつ丼もの屋か蕎麦屋かの違いは聖杯戦争には全く関係ないことなので放っておかせていただく。そんなことよりも面子がおかしい。外人三人にアイドル一人にビジュアル系一人という、これがお洒落なカフェならばまだ格好はつくものの、断じてどんぶりを囲んで各々つついていいような人選ではない。無論、こんな五人が二つのテーブル三と二で別れて飯を食っていたら店内はざわつくし店員のパートのおばちゃん達はヒソヒソと本人達は話してる気で会話しているのが聞こえるしなんなら注文しようと食券の券売機の前に立った客が「あれってあのアイドルじゃね?」と思わず二度見するぐらいには騒ぎになっていたがそんなことはともかく五人の『参加者達』は会話を続けていた。 「伊達男さんはアーチャーさんのお知り合いだったんですね。さっきは、ホント!スミマセンでした!!」とどんぶりとうどんが山を作っているお盆にめり込ませるように頭を下げたのは日野茜だ。 彼女には負い目があった。タクシーでスーパーに乗り付けるやいなやランサーを実体化させると猛ダッシュし、マイケル達を見つけるとカメラが着いてきていないことを不安に思いながらも大声で声をかけ、その結果やたら滅多に周りの注目を集めてしまったのだ。彼女としてはマイケルが襲われていると勘違いしての行動だったが、企画の趣旨を考えると逆効果だろう。そもそも伊達男を敵だと思い込んでしまったこともありこうして反省していた。 ちなみに彼女が頼んだメニューはカツ丼とミニうどんのセットとそばとミニ天丼がセットだ。一般的な成人男性の二食分である。カロリーは軽く1000どころか2000をオーバー。いったい彼女の小さな体のどこにそれだけのものが入るのだろう。 そして彼女の前、つまり伊達男とアーチャーと相席して鴨南蛮を食べている男も「スミマセンでした!!」と彼女と同タイミングで頭を下げた。 男の名は真田幸村。武田信玄に支える武将であり、2016年には堺雅人が演じて大河ドラマの主人公にもなり、『日の本一の武士』等と北関東の一部で言われるほどの英霊である。そんな彼は今回、ランサーのクラスで日野茜のサーヴァントとなっていた。 彼もまたマスターの茜同様反省していた。否、マスターの茜以上に反省していた。 聞けば伊達男、ランサー達がアーチャーと同盟を組む前にアーチャーに声をかけたと言うではないか。それどころか魔力切れで倒れたマイケルをアーチャーと共に病院に送るよう手配したという。 そんな人物に危うく槍を向けそうになるとは、とランサーは己の失態を恥じていた。 ちなみに、伊達男がアーチャーと共にマイケルを病院にうんぬんかんぬんというのは二人の真っ赤な嘘である。よって少なくともそのことでランサー主従が引け目を感じる必要はなかったが、もちろん伊達男もアーチャーもそんなことは言わなかった。 そんなランサー達に対し、天ぷらそばをれんげとフォークの二丁持ちで器用かつ上品に食しつつ「仲間思いで結構なことじゃあないですか、非礼を許しましょう」などと宣いながら笑っているのが『伊達男』ことトバルカイン・アレハンブラだ。 この男、マイケルを最初は脅迫しておきながらランサー達が駆けつけたのを見て直ぐ様それまでの慇懃無礼な態度を引っ込めた。そして極めて紳士的な態度を取り繕うと怒気をはらんだ声で問い詰めてきたランサー達を紳士的に宥めたのだ。ランサー達としてはマイケルに危害が加えられているという想定でここまで来たこともあり、一緒に食事しているというのは意表をつかれるものだ。そこにつけこむかのように、自分はマイケルとの同盟を求めてここに来た、と述べて二人を丸め込んだのだ。その手腕は見事と言うしかない。彼はこんな喩えを嫌がるだろうが、英国紳士もビックリだ。 ちなみにこの男、天ぷらそばを頼んだことを後悔している。パスタがスープに浸かっている様なものだろうと思って頼んだのだが、想像以上につるりつるりと滑ってもどかしい。日本人はなんでこんなしちめんどくさい料理を作ったのだと本気で疑問に思っていた。 そして伊達男の対面、アーチャー・ワイルド・ドッグはこの店に入って以来沈黙を貫いている。適当に伊達男やマイケルに相づちを打つと後はただただ食べていた。 茜達の暗殺失敗後アサシン・千手扉間の為に病院に取り残される形になった彼だが、もちろんアサシンのことは速攻で見捨てた。単に他のサーヴァントに構っていられないというのもあるが、なぜなら病院は少なくともこの店よりは安全だからだ。 アーチャーは病院への爆破予告はブラフであるとほぼ確信していた。理由は簡単、あのアサシンが根城にしていたのに爆弾を仕掛ける隙はなかっただろうという予測だ。アーチャーは、その程度にはアサシンのことをかっている。あのアサシンの目を盗んで爆破など不可能であろう、と。よってあの爆破予告はイタズラかなんらかの牽制であると見ていた。それが誰の犯行かはわからない。なんならアサシンが予告した可能性すらある。あの男ならやりかねない。 そして今現在、あの病院からは本当に爆弾が見つかってしまったのだ。アーチャーが病院を出る頃には既に警察とマスコミが爆弾騒ぎを聞きつけて動いていたことを考えると、病院を戦場にしようなどというのはよほどのバカでもなければしようとしないだろう。アーチャーとしては暗殺が失敗したのは不本意だが、アサシンを置いてこれたのは不幸中の幸いだろうか。 ちなみに、五人のなかで一番箸の使い方が上手いのはアーチャーだ。時おり付け合わせの味噌汁に口をつけつつ、模範的な箸使いで天丼を食べ進めていっていた。 (不味いな……) それら四人を見て、一人月見うどんを食べつつ、アーチャーのマスターであるマイケル・スコフィールドは思考を巡らし状況の違和感を感じていた。 この状況、どうもおかしい、なにかが致命的に危険な気がする。そうマイケルは感じていた。 場の流れはいつしか、茜と伊達男によって握られていた。まずその事が、マイケルに警戒感を抱かせる。他の人間に会話の主導権を取られるのは、まともな常識が通じない場所ではーーそれが刑務所か聖杯戦争かの違いはあれどーー良くない兆候だ。マイケルはそう感じることが身についていた。とはいえ、それだけならばマイケルはなにもここまでの危機感を感じないだろう。 問題があるとすれば、この二人だからだろうか。両者はある程度理性的に思えるが本当にそうかはわからない。どちらも今日はじめて会ったばかりの人間なのだ。その得体の知れない人間達に会話させるのは、怖い。マイケルはそうも感じる。言ってしまえばこの二人はどちらも信用がいまいちできないのだ。 茜は明らかに悪人ではないと思えるが、それが正気であることの証明にはならない。そしてアーチャーの仕掛けた爆弾を見破ったのも、一つ引っ掛かる。果たして、ただのアイドル志望の少女が、しかも銃すら持ったことのない少女が英霊であるサーヴァントの暗殺からそんなにも容易く逃れられることができるのかという疑問があるのだ。 伊達男などことさらだ。同盟したいという提案はわかる。出会い頭に脅迫を受けたのも大した問題ではない。では何が問題というと、マイケルのサーヴァントであるアーチャーと接触していた事実だ。マイケルがアーチャーに単独行動を許した時間は短い。にも拘らず、二騎のサーヴァントはいったいいつ接触したというのか?伊達男の説明とアーチャーの首肯によれば、自分が眠っている間のことだろうが、そんなことの報告はアーチャーより受けていない。本来ならばこの事を問い詰めたいところだーー主従間の不和を他の主従に見せるような真似はしたくないのでやめておくが。 マイケルはうどんの杯をあおぐ。自己紹介も終わり、ここからは野次馬の目のない場所に移動して話し合おうということになった。彼も賛成した。どうも、人からヒソヒソと言われるというのはここ最近なれない。アイドルならいざ知らず、こちらは一月ほど前までは脱獄犯だったのだ。ただでさえ緊張を強いられているこのような気の休まらない場所に長居するのは御免被りたい。 先に店を出た伊達男の背中を見る。とにかく、まずはこの男だ。胡散臭さで言えばアサシンと同程度だが、味方に引き入れる必要がある。でなければ、最悪アーチャーが裏切ることも考えられる。本選が始まって一日目で倒れるようなマスターを見限って、他のマスターに鞍替えする可能性も、忘れてはならないのだ。そう頭に刻み込み、二騎の信用ならないサーヴァントに目を向け。 「?」 その二騎が、同じ方向を向いているのを、そして互いにちらりと視線を交わしたのを、マイケルは見逃さなかった。 マイケルも、視線を向ける。二人の眼光は人を殺す人間の目だと、マイケルは感じた。その視線をなぜ、今このタイミングでそちらに向けたのか?それを疑問に思い、マイケルはすぐにその理由を知るところとなった。 B D A B A そう頭上に表示されるーーやたら巨乳のメイドがいた。 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 巨乳。 それは乳房が大きいこと。 巨乳。 それは近年増えつつある人類のアイデンティティーの一つ。 巨乳。 それは人類が紀元前より抱いていた豊穣という概念の結晶。 ーー自分じゃ巨乳にはなれない。そう思って諦めてたんですよね。 でも今はどうですか? ーーちょっとそれは……まあご覧の通り?(笑) ーーそうですね、はい。実感してます。 巨乳である。それが第一印象であった。 でかい。アメリカ人であるマイケルからしてもなおデカイ。なんだあのデカブツは。人間なのか。いや、サーヴァントなんだろうが。幼い顔と不釣り合いな、巨乳。なにかフィギュアめいた印象をマイケルへと与えてくるそのサーヴァントーーアーチャー・安藤まほろは、堂々とこちらへと笑いかけてきた。 ーー聖杯戦争に出るってなったときはどうしようって思ったんですけど、出て良かったって思えることの一つは、これですかね。 そう自信の笑みを浮かべて答えるのは、メイドでサーヴァントのまほろさん。彼女が新しい一歩を踏み出したきっかけはなんだったのでしょうか。 彼女のマスターであるナノカ・フランカさん(プロスペロ発明工房)は「前面装甲、特に胸部の追加装甲がカギ」と語ります。 ーーナ「アーチャーというクラス上仕方いんですけど、耐久が低いんですよね、これだとインファイトに不安が残るっていうのがありましたね。」 ーーナ「携行している武装も考えると、近接戦闘をしなくちゃいけない場面が必ずくると思って、それなら霊核の防御だけでも優先しようって。」 ーーナ「開発は難航しました。NテクはともかくEテクはここでは全くと言っていいほど使えませんから。オリハルコンの供給が0っていうのが、難しいところでした。もちろん資金難ていうのもあったんですけどね(笑)。サーヴァントの戦闘に耐えられるような素材だと加工できないし、かといって通常の素材じゃただのデッドウェイトになる。」 ーーナ「解決策はアーチャーさんの持っていたナイフを素材にすることでした。魔力で復元できるならって思って試したんですけど、耐久性も高くて。」 ーーナ「う~ん、もし時間が許すなら(作り直したい)。加工ができないので、どうしても大型化してしまうことと、金属なので胸の柔さは失われちゃいますし。」 ーーナ「いや、(あれを巨乳というのは)無理があると思いますね。鎧ですもん。ギリギリブラジャーって言えるかも知れませんけど。」 ーーナ「はい、巨乳ではないです。」 ーーこの胸は、ナノカさんの努力と思いの結晶なんで。 ーーええ、背中は向けられません。 サーヴァントをどうすれば生存させられるか、その事をナノカ・フランカほど考えた人間もいないだろう。 多くのマスターは、サーヴァントの効率的な運用を追求する。それは正しい。それはナノカがアーチャーに求めるところでもある。 しかしナノカは、そのためのコンセプトが違った。彼女が求めたのは、サーヴァントの『生存性』。索敵や暗殺など攻勢の能力向上ではなく、守りに入った生き残りへの方策であった。 このコンセプトは、アーチャーのスペックが防御に回ると弱いという分析を元にしている。アーチャーの装備とノウハウならば戦場を選ばずその制圧力を発揮できるだろうが、反面防御の手段に乏しく思えた。アーチャーは防御よりも回避を主としているようだが、ナノカもアーチャーも知らない魔術という存在にそれが通用するのかという問題があったのだ。考えたくはないが、「なんでも斬れる剣」や「どんなものでも跳ね返す盾」のように「絶対に当たる矢」があってもおかしくはない。そうした回避をピンポイントで潰してくる未知の攻撃への備えが、この『巨乳化』であった。 そしてこれにはもう一つの理由がある。アーチャーには、自己改造やそれに類するスキルがない。そのためナノカのせっかくの技術がアーチャーに僅かにしか活かせなかったのだ。もし、ナノカがしかるべき資材と設備を持ちアーチャーを開発できていれば、その運用には大きなプラスが得られただろう。しかし今のナノカとアーチャーに出来ることはごくごく限られていたのだ。 その結果が、この開発とも呼べない『巨乳化』という苦肉の策である。短刀を流用して運動性を可能な限り損なわない範囲で追加装甲を施す。元がアーチャーの装備であるため霊体化も可能。急場凌ぎの域は出ないが、確かに前面からの心臓への攻撃は防げるだろう。 そして実際、今この場で戦えばその装備は有効に働くであろう。アーチャーが相対しているアーチャー・ランサー・伊達男の三騎では、この装甲を抜いて心臓を貫くのは少々難しい。少なくとも今の三騎では無理だ。故に、この三騎相手ならばそれは非常に有効な策なのである。 だから、この三騎以外に有効とは限らない。 伊達男は、目の前の強敵をどう料理するかと考えていた。同盟に加えるか?戦闘に持ち込むか?まあ前者だろう、そんなことを考えていた。 伊達男は、目の前で日が陰ったことには気づけた。好都合だと思ったからだ。窓から射す僅かな日光でも、吸血鬼の彼にはダメージになる。だから日光というものには人一倍気を使っていた。 伊達男は、後ろの茜が目の前のメイド服のサーヴァントに声をかけようとしたのを止めた。それは彼女に余計なことを喋らせたくないからという理由もあり、また勢いに乗って戦果を拡大したいという功名心もあった。 そしてなにより。 そのメイド服のサーヴァントの横にいるマスターらしき少女の更に後ろにいる眼鏡の少年ーー野比のび太。 自分に敗北の苦汁を舐めさせ、あまつさえ焼き殺されかけた相手であり、アーチャー・ワイルド・ドッグとの『共犯』を生き残った『被害者』であり『生存者』であり『目撃者』。 そんな相手を。 (生かしてーー) 「おけるあああぁぁぁぁぁっっっ!?!?!」 瞬間、伊達男は着火。右半身を中心にその体が焼けていく。 「左ですっ!」 メイド服のアーチャーの声に従い、思わず向かい合うマスター達は右ーーアーチャーの向いた方向を向く。もちろんそこにはなにもなく。 「伏せて!」「ますたぁ!」「Head down!」 今度は押し倒されたマスター達の頭上をレーザーが薙いだ。 「浅いか。」 ランサー・カルナはそう呟くと、再び窓ガラスからスーパーの内部を伺う。 初撃でまずは一騎、視界に捉えたサーヴァントを殺したと思ったが、殺しきれたとは思えない。 次の横に薙ぐ一撃、これも見事にかわされた。とっさに判断して指示を出した女のサーヴァントはもちろん、それに躊躇なく従った男のサーヴァント達も油断できない。 既に内部へと逃れたのだろう、NPCの死体以外人の形をしたものはなかった。 マスターであるイリヤを美遊が護送するまでの陽動と足止め、それがランサーの目的であった。ランサーという存在は、どうやら予想以上に知られているらしい。美遊にそうテレビ等の先進的な道具で教えられ、それならば目立つことを利用しようというのだ。 つまり、ランサーにとって先程の、あるいはこれからの戦いは、サーヴァントの消滅を目的としていない。時間稼ぎにさえ成功すればそれでよいのであって、自身に危険が及ぶほどの積極策をとる必要は全くない。まあ視界に入ったならば宝具を打つことに躊躇いはないが。 ランサーは霊体化したままスーパーへと足を踏み入れる。今の彼に殺意はない。あるのはマスターの安全とその為の自身の生存である。 【新都・線路の南側にある警察署近くのスーパー/2014年8月1日(金)1248】 【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】 [状態] 筋力(20)/B、 耐久(20)/B、 敏捷(15)/C、 魔力(15)/C、 幸運(15)/C、 宝具(0)/B、 実体化、疲労(中)、魔力消費(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足により全パラメーター半減、肋骨にひびと内臓に損傷(どちらもまあまあ回復)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。 [思考・状況] 基本行動方針 強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥ 1 とにかく逃げる。伊達男殿は…… 2 ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。 3 病院のあさしんは大丈夫だろうか。 4 ますたぁ(茜)への申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。 5 あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とアサシンは言ったが‥‥ 6 俺は…… 7 せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)と再戦し、勝利する 8 あの卑劣な作戦、やはりあさしん(扉間)は忍びの者……? [備考] ●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認しています。 ●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。 ●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。 ●病院内にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。また病院外でも地方紙で報じられています。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。 ●爆破予告を知りました。 【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態] 腹八分目、魔力消費(大)、頭にタンコブ(応急処置済)、??? [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!! 1 .聖杯戦争という企画を頑張る! 2.とりあえず逃げる! 3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。 [備考] ●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。 ●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。 ●自宅は深山町のどこかです。 ●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。 ●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。 ●病院にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。 ●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。 ●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。 ●爆破予告を知りました。 ●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者がこの事を知っています。 【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】 [状態] 筋力(15)/C、 耐久(15)/C+、 敏捷(10)/D、 魔力(1)/E、 幸運(10)/D+、 宝具(0)/E 満腹、霊体化、魔力不足(極大)、実体化に支障、魔力の不足により全パラメータ半減、魔力不足により宝具使用不可。 [思考・状況] 基本行動方針 優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。 1.なんだかよくわからないが逃げる。 2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。 3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。 [備考] ●乗り換えるマスターを探し始めました。 ●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。 ●ドラえもんでの魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】 [状態] 満腹、点滴、魔力消費(極大)、精神的な疲労(大)、衰弱(中)、覚悟。 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 優勝を目指しているが‥‥? 1.なにが起こっているかわからないが逃げる。 2.アーチャーに不信感。 3.もう一度病院に潜伏するか、それとも…… 4.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は…… 5.アサシンのマスターはどこだ? [備考] ●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。 ●自宅は新都の某マンションです。 ●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。 ●SEASON 2終了時からの参戦です。 ●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。 ●日野茜への好感度が上がりました。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。 ●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。 ●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。 ●トバルカインのステータスを確認しました。 ●アーチャーよりトバルカインの情報を聞きました。 【トバルカイン・アルハンブラ(-)@ヘルシング】 [状態] 筋力(3)/C、 耐久(2)/ D、 敏捷(3)/C+、 魔力(3)/C、 幸運(1)/E、 宝具(0)/-、 生死不明、霊核損耗(大)、消滅開始、右半身消滅、左半身炭化、裏表紙のノリへの耐性。 [思考・状況] 基本行動方針 この聖杯戦争で軍功を挙げ、意地を見せる。 1.…… 2.最寄りの病院を襲撃しようと思ったが、まずはマイケルをなんとかする。 3.今度こそ軍功をあげてみせる。 4.病院で爆弾が見つかったらしいが……? 5.‥‥どうせなら葉巻を吸いたいな。 [備考] ●一応本編からの召喚ですが若干テンションがおかしいです。 マスターである少佐と視界共有を行えますが念話はできないようです。 ●冬木大橋でのイリヤ バーサーカーvsいおり ランサー戦を観戦しました。どの程度把握したかは不明です。 ●トバルカインのマスター(少佐)とアーチャー(ワイルド・ドック)と三人で話しました。 ●消滅が開始しました。もしかしたらもう死んでます。 【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】 [状態] 筋力(40)/B 耐久(28)/D 敏捷(50)/A 魔力(41)/B 幸運(150)/A++ 宝具(40)/B 満腹、魔力上昇(微)、巨乳化 [思考・状況] 基本行動方針 マスター第一。 1 逃げますよ! 2.のび太とのコミュニケーション。 3 さっきあったサーヴァント達から話聞きたいけどそれどころじゃない。 4.今後についてマスターと話し合う。 [備考] ●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。 【ナノカ・フランカ@蒼い海のトリスティア】 [状態] 満腹、スプレンティッド・インパクト所持(ラケットケースに携帯)。 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 家に帰るのが第一、聖杯の調査が第二。 1 逃げましょう! 2.のび太とのコミュニケーション。 3.今後についてアーチャーと話したりいろいろ「用意」したい。 [備考] ●予選より装備が充実しました。 ●ドグラノフ、及びその弾薬千発を自宅ガレージ内に所持しています。 【野比のび太@ドラえもん】 [状態] 軽傷(主に打撲、処置済み)、ひみつ道具破損 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争を止めて家に帰る。 1.ナノカさんとアーチャーさんについていく。 [備考] ドラえもんの四次元ポケットを持っています。 【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】 [状態] 筋力B(40) 耐久C(30) 敏捷A(50) 魔力B(40) 幸運A+(30) 宝具EX(?) ダメージ(中・回復中)、霊体化。 [思考・状況] 基本行動方針 イリヤスフィールを聖杯へと導く 1 新都で陽動として戦い、イリヤを護送している美遊から目をそらさせる。 2:美遊は自身のことをイリヤに伝えるなと言った。オレはーー 3:美遊に興味 [備考] ●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました ●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。 ●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。 ●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。 ●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。 返却されれば瞬時に回復するでしょう。 ●美遊 バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。
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始まりの御三家 【高町】(やる夫の家系)が場所を提供、【巴】(マミの家系)と【博麗】(神社)が聖杯の作成を担当。 ここの聖杯の成り立ち 国民性といっていいのかわからないけどこの国は八百万の神を祀って【外】からもどんどん受け入れてることから【神秘】とかそういうものが節操なく国に組み込まれていっている。 そういった力は霊地などに還元されるが、現状の節操なく流れが入り組んでいる状態では当然淀みが生じ、たまりにたまった淀みは溢れればそこを人の住める土地ではなくしてしまう。 そこで【博麗】が懇意にしていた天津神は考えました。【溜まって淀むのなら、使ってしまえばいい】 【溜まり淀んだ霊力】を核にサーヴァントを呼んで。その戦を浄化の奉納の舞という儀式として扱って。そうして浄化された過剰な霊力をもって願望を叶える。これがこの地の【聖杯】。 【聖杯】の発現にはサーヴァント同士が死力を尽くして戦い合い、戦うことのできるサーヴァントが最終的に一体となればよい。マスターの脱落やサーヴァントの消失は必須ではない。 今回の聖杯の器はまだ何かは分からないが戦いが進むにつれそのうち姿を現すらしい。 参加者の選定(令呪の発現)基準は一定以上の魔力があること。また何か【願い】があると令呪が発現しやすい。ただし御三家には優先的に参加枠が割り振られる。 この方式で過去に少なくとも二度聖杯が作られている。参加者の選定基準のために強力なサーヴァントが呼ばれやすく一回目の優勝はヘラクレス(アーチャー)、二回目の優勝は光の神ルーグ(ランサー)。 聖杯自体には教会成分はないものの、毎回怪獣大決戦が起こるので神秘の秘匿を目的として教会に監督役が派遣されている。
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ギルガメッシュ@Fate/EXTRA CCC 詳細 古代ウルクの王にして、人類最古の英雄王。 幾度か聖杯戦争に参加した経歴があり、その時のクラスはアーチャーであったが、現在は本人の言によりどのクラスにも該当しない。 半神半人のため圧倒的な神性を有し、たった一人の友を除いた全ての者を雑種と呼び捨て下等なモノと断じる。 あらゆる英霊の宝具の原典を所持しているため、ほぼ全てのサーヴァントに対し優位に立つ。 世界に散逸しなかった彼個人の宝具もあるが、彼が力を認めた敵手でなければ使用する事は無い。 宝具を弾幕のように射出する事で他を圧倒する破壊的な火力を誇り、それが故に以前はアーチャーのクラスに該当していた。 月の聖杯戦争に於いてはあまりにも強力すぎるため、ムーンセル・オートマトンに不要と判断され、月の裏側に封印されていた。 呼び出された時代によって人格に影響を受けるらしく、月に召喚された彼は冬木市に召喚された時より(少しだけ)人当たりが柔らかくなっている。 【NAME】 ギルガメッシュ 【CLASS】 なし 【MASTER】 なし 【STATUS】 筋力:B 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:A 宝具:EX 【SKILL】 神性:B(A+) その体に神性属性があるかないかの判定。最大の神霊適性を持つのだが、ギルガメッシュ本人が神を嫌っているのでランクダウンしている。 黄金律:A 身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。ランクAともなれば黄金の塊と言える。 コレクター:EX より品質の良いアイテムを取得する才能。レアアイテムすら頻繁に手に入れる幸運だが、ギルガメッシュ本人にしか適用されない為、マスターに恩恵はない。 【NOBLE PHANTASM】 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン) ランク:E~A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 黄金の都へと繋がる鍵剣。 空間を繋げ、宝物庫の中にある道具を自由に取り出せるようになる。 使用者の財があればあるほど強力な宝具になるのは言うまでもない。 天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ) ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人 開闢――すべての始まりを示す、ギルガメッシュの最終宝具。 メソポタミア神話における神の名を冠した剣、乖離剣エアによる空間切断。 三層の巨大な力場を回転させる事で時空流を引き起こし、空間そのものを変動させる。 その真の威力は一個の生命相手に用いるものではなく、世界を相手に用いるもの。 サーヴァントたちが持つ数ある宝具の中でも頂点の一つとされる、「世界を切り裂いた」剣である。
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474 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/11/11(日) 03 48 19 「敵ライダーの足止めを願いたい」 十字砲火からの脱出の瞬間敵が見せた突撃、それを考えれば戦列で止めるのは至難だ。 包囲を続ける敵を早期に撃破してその後敵を攻撃する案も考えたが、早期に倒せる保証はなく、仮に倒せたとしてももう一方に逃げられる可能性を考えれば、それは却下するべきだと判断した。 更に言えば、敵の足止めをしてもらえばその間に狙撃する事だって可能だろう。 その為の戦力を出し惜しみするつもりはなかった。 「なるほど、足止めね」 足止めと言う言葉で、何を考えているかは推測できたのだろう、シャリフは大して逡巡せずに頷いた。 「それじゃあ精々、こちらを巻き込まない程度に援護を頼むわね」 それだけを言って、音の方角にK1200Rを加速させ、ジェネラルの視界から消えた。 何かがあったというわけではない。 パスは正常で、魔力供給も問題は無い。 だが、漠然とした不安があった。 しようと思えばいつでも可能であったはずの念話が途切れているという事実があった。 新たに関わる事となった聖杯よりも歴史の古い――とはいえ、その歴史は終わっているのだが――冬木聖杯から招かれた故か、共に暮らしてきた時間の長さ故か、敵を追い殲滅するという作戦以上に、主の身の安全の確認を優先させた。 敵マスターの安全が確定したにも関わらず、敵は迫ってくる。 この速度域に、Y2Kの最高速度に迫ってくる。 のみならず敵は前方から現れ、進路の妨害を目論んでくる。 それは信じがたい事だ。 試したわけではないが、この速度域は敏捷判定でAを誇るライダーをして追跡不能であると断ずる事の出来る。 これが峠のように狭く、曲がりくねった山道であれば追跡は容易であったろう。 だがここは直線の道路、市街地である。 本陣で予測したとおり、敵の戦闘力は大したことはない、妨害を目論んだ敵の攻撃、その尽くを弾き、釘剣を突き刺し、後方に投げ捨てた。 だがその数秒後には進路上に現れ、再び妨害する。 何度続けても立ち塞がる、その事実はひたすらに不気味であったし、それが何かを目論んでの行動だとすれば焦りさえ生まれてしまう。 その思考が隙を生んだのか、それとも連続する攻撃によって気付かぬ程度に集中力が失せていたのか、ついには敵の一撃を完全には弾けず、バランスを崩し、その結果軌道が逸らされた。 正に矢のように、最高速度で市街地を疾走していたバイクの軌道が横に逸らされれば、待っているのはビルやガードレールとの衝突である。 それを理解し、全力で挙動を修正する。 敵の速度は尋常ではない。 この機体から降りる事になれば、恐らく間断のない攻撃により数分はこの場に留められてしまうだろう。 とはいえ、彼女自身の敗北はまるで考えていない。 だが戦術で勝利しようと、戦略で勝利をしなければ意味はないのだ。 衝突は免れたが、数度の回転を加えられたY2Kは完全に停止し、周辺は灼けるようなゴム臭が満ち、更に白煙は焚火の煙のように路上に上がった。 「やはり離れるべきではなかった……」 後悔はある。 だがこの後悔は洗い流せる物だ。 「サクラ……すぐ行きます、無事で居てください」 そう決意を新たにした直後、足音を聞いた。 音の方向へ視線を走らせる。 敵の本陣で見かけたような体躯の、和服を着た少年の姿があった。 その姿は小柄ながら、腰に下げた一振りの直刀は歓迎できる物ではない。 そして和服の色や模様は、彼女にとって『見慣れた』物であった。 勿論、実物を手に取ったわけではなく、あくまで書物などからの知識に過ぎない。 だがそれは余りにも有名に過ぎ、彼女が目を通した数多くの物語の中で幾度も主役となり敵役となった物だ。 「新撰組……?」 その言葉に応えるように少年が抜刀する。 抜刀し、構えたその姿は武士そのものである。 そして驚くことに、その姿に血糊も、それどころか汚れすら無い。 あれほどに突き刺したというのに、怪我一つしていないというのだろうか。 「私に関して問うならば、然りと」 少年が僅かに口を開く。 実際の実力はどうあれ、この少年が『新撰組』であり、ここが『日本』であるならば、戦闘能力は上方修正されているだろう事は容易に想像が付いた。 なれば―― 停滞:何かを気にしながら戦うわけにもいかない 突破:まともに相手をせず、その場を逃げ去ることに全力を尽くす方が賢明だ
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月が紅いワケ ◆B7YMyBDZCU 【月が紅い理由――教えてやるよ】 右腕は動く。 彼が意識を回復してから真っ先に行った行動。無言で右腕を掲げる。 頭が暗い闇の底に眠っているみたいだ、思考機能が現実に追い付いていない。 廃墟の空間、何も生物らしさを感じない其処で彼は腰を下ろし壁に背を。 聖杯戦争――聞いたこともなければ見たこともない。嘘か本当かのお伽話だ。 願いが叶うなんて迷信や伝説、過去に残された歴史だけに許されている褒美と来たもんだ。 どんな状況や境遇でも有り得ない摩訶不思議な現象を餌に人間を釣る存在の思考は理解出来ない。 「……」 人間を釣る。その人間には勿論自分も含まれている。 彼は人間だ、人間である。外野が騒ごうが彼は人間で在り続ける。 その脳は無傷。寄生などされておらず思考、意思、想いは彼だけのモノ。 右腕を揺らす。 その行動に別段意味は無く、問いかけるように右に左に揺らし続ける。 ……。 返答は無い。 そう――返答は無いのだ。 右腕を揺らすその行為に対する反射が返答。彼は何を求めているのか。 返答だなんて。まるで右腕を生物のように思っているのだろうか。 返答が無いならば仕方が無い。返ってこないならば、仕方が無い。 この状況を理解しようと本能が働き始める。 身体に傷はない。 最後に見た光景は夜空を不気味に飾る紅い月。 物珍しさに空を眺めていた、そんなある日に突然、意識が、彼が消えた。 その姿は世界から消え去り召されるは異形の地。聞くも見るも全てが初の感覚。 記憶の糸を辿るも出てくる情報は砕かれた欠片であり把握には繋がらない。 此処はどこだ、それは東京だ。之はなんだ、聖杯戦争だ。記憶に刷り込まれている。 だが重要なのは違う、何故、自分は此処にいるのか、何故、聖杯戦争に――。 ドクン。 ……? 突然跳ね上がる心臓。前触れもなく、息をするように。 それは分類するならば反射的な直感。本能が告げるのだ、考えるよりも早く。 此処はキケンだ、と。 辺りは夜だ。否定するなど不可能であり決定付けられている。 視界は朧げながらも目の前に立っている異質な存在を捉えているのだ。 背けたいその存在は視界に立っている、背けたくても引き寄せられてしまう。 悪の美学――とでも言えばいいのだろうか。目の前の存在は紛れも無く社会に必要ない存在に見えるのだ。 彼はその男を知っているわけでもなく、初対面。素性も何もかもが不明。 完全なる第一印象で判断をしているが感じ取れる空気は穏やかではない。 その空気は鋭い、それもシャープではなく暗く、己の満足のために他者を斬り裂くナイフのように。 男の髪は白、サングラスの奥に潜む瞳は獣のように餓えていた。 血生臭く、初対面でも解る。 この男は屑だ、人間を何人も殺している、と。 「なーに見てんだよガキ、状況も飲み込めねぇのか」 退屈そうに呟くと男は指を鳴らし始める。 その言葉を聞いた男、泉新一は吹き返したように息をした。 止まっていた、目の前の男に気付いてから彼の時は止まっていたのだ。 視界に捉えた瞬間から襲いかかったのは恐怖、その領域は生物が本能的に察知する。 この男から感じる恐怖はまるで寄生の――。 「おいおい、こっちはよぉ。ったく……有り得ねぇ」 泉新一が言葉を紡げない中、対する男は独り言のように言葉を吐く。 「なんだこの身体は? 水銀の糞野郎も満足して逝っちまったんじゃねぇのか、メルクリウス。 だったら俺は可怪しいよなぁ、【なんで俺はこんな事になってんだ】。しかもアサシン、何だコイツぁ」 水銀、メルクリウス。聞こえてくるのは恐らく固有名詞の類。 しかしそれらの断片は流れて行き、身体に刻まれる情報は無い。 鼓動が早い、本能が告げている、逃げろ、と。ならば――。 「お前は……誰だ」 不思議だ。 今は冷静になっている、心が、心臓が。危険な状況でも落ち着き始めた。 慣れた。 今は冷静になっている、心が、心臓が。危険な状況でも落ち着き始めた。 慣れてしまった。 今は冷静になっている、心が、心臓が。危険な状況でも落ち着き始めた。 「んなことも解んねぇのかよぉ、見れば解んだろ」 問に正答を送るワケでも無く、男は邪悪な笑みを一瞬浮かべると再度言葉を吐く。 「ガキ、俺はお前なんてどうでもいい。死んだって困らねぇんだよ。 マスターなんていらねぇ、俺に首輪を嵌めるたぁテメェ如きじゃ無理だ。 此処で遊ぶのも悪くはねぇけどよぉ。裏で語り部気取ってる奴が気に入らねえ」 男の表情から怒りを感じる。 しかしそれは野蛮な物ではなく、ある程度諦めているような、受け入れてる部類。 心当たりでもあるのだろうか。この男は何を言いたいんだ、全く解らない。 「お前は何なんだ……?」 「俺かぁ? 知りたいんなら黙って教科書でも読んで来いよ英霊様の御前だぞッてァ!」 世界は思ったよりも未知に溢れている。 その未知に触れると新しい道が広がる、迷惑な話だ。 現に目の前の男の蹴りを腹に受けた泉新一は後方に飛ばされ汚く転がった。 受け身も取れずに転がる泉新一は適当な所で立ち上がり男を見る。 不意を突かれた一撃は躱せなかった、不意じゃなくても躱せるか怪しい。 呼吸を整えながら男を見つめる、視界から外せば此方が死ぬ。 「これでちったぁ目、覚したか? 俺が目の前に立ってんのに黙ってたからよォ、目覚まし代わりの一発だ」 男の発言で気付く。【最初からこの男は近くに立っていた】のだ、と。 其れは突然の出来事で脳が働かなかったのか。本能が認識する事を避けた結果なのか。 何方にせよ気付かなかった方が幸せだったのだろう。出会い頭に蹴りを入れる男だ。 マトモな生物じゃあない、関われば関わる程自分の身が危険になっていく。 生物。 この男は同じ人間だろうか。その見た目は人間と変わらない。 だが見た目は同じでも中身が違えばそれは異形の怪物だ。 泉新一は知っている。 人間社会に潜む、器に寄生している生物を彼は知っている。 しかし目の前の男からは無機質を感じないのだ。彼が知っている闇とは違う。 男はまだ感情があるように振舞っている、ならば。 「――サーヴァント、か」 「気に喰わねぇんだ、ソレ」 聖杯戦争の情報が脳に響き始めた。そうだ、泉新一、彼は聖杯戦争に参加した。 それは真意か本意か不本意か。本人にしか解らない。 戦争は一人で行わず、従者が存在する。 「じゃあお前が俺の……」 「気に喰わねぇって言ってんだろガキィ」 サーヴァントなのか。言葉を言い終える前に泉新一は外に出ていた。 彼がいたのは廃墟の内部、気付けば男に胸倉を捕まれ放り投げられていた。 片手で青年を放り投げる腕力は人間の領域では不可能だ、これで決定だろう。 目の前の男は相棒【パートナー】だ。 望んで参加しているワケではない戦争に選ばれた相棒は社会に適合出来ない獣。 黙って檻に入るなり自然に帰るなり……愚痴を零したくなる。 泉新一は着地と共に迫ってくる男の拳を左腕を使い軌道を逸らす。 そのまま腹に膝蹴りを放つも男は軽々と掌で受け止めた。 「喧嘩はしたことあんのか、でもよ……退屈だぜ」 男は掌に少し力を加える。泉新一の顔には苦痛の表情が浮かび上がった。 粉砕だ。彼の膝が粉砕せんと壓力を掛けられている。 「ッあああああああああああああああああああ」 叫びと共に渾身の力を振るい足を大地に突き刺すように降ろす。之により男の掌から解放。 そのまま勢いに任せ右腕の一撃を男の顔面へ、動作に隙も無ければ迷いも誤差も無い。 本能から繰り出された一撃は相手に悟られること無く吸い込まれ――。 「もうちっと樂しませてくれやァ!」 待ち構えていたのは顔面ではなく繰り出された拳。 不意を突いた一撃と確信していたが、男は一撃に合せ拳を重ねてきた。 本能による一撃ならばより獣に近い相手の方が上手。珠戦闘における経験では泉新一よりも男が上回っているのだ。 泉新一と男の拳、互いに衝突し鬩ぎ合う、事もなく泉新一が押し負け数歩後退する。 弾かれたように鑪を踏みながらも体勢を整えようと踏ん張るが男は刹那も待つつもりはない。 踏み込み何て要らない、力任せに再度拳を放つ。 「――あァ?」 風が舞う、屋外に自然とは別の異質な風が男の白貌を掠り取る。 この場には泉新一と男しか存在しなく彼らを邪魔する者など本来登場することは有り得ない。 ありきたりの筋書きに現れるは役者だ、それも特殊で特異な右腕。 『何をしているんだシンイチ』 名をミギ―。 泉新一の右腕に寄生した虐殺器官《パラサイト》。 その姿を異形で鋭利な刃物に変貌させ男のサングラスを削ぎ落した。 「カハッ、クク、そうかい。人間じゃねぇってか? 俺を下僕にすんだ、隠してんモン全部吐きだせやァ!」 ミギ―に落とされたサングラスを自ら踏みつけ笑う男。 その笑い声に品など欠片も持ち併せず与える印象は不快そのもの。 『シンイチ、私にも聖杯戦争の概要の知識がある。つまりあの男が君のサーヴァントか』 「ああ……信じられないけど、な」 『解っているとは思うが君はあのサーヴァントには勝てない。規格外の存在だぞ』 「解っている、こんな状況でも心は落ち着く」 冷静さはある。だが全てが事態に追いついているかと言えば嘘になってしまう。 結果としてこの状況に対する打開策など見つからず、そもそも打開など出来るのか。 圧倒的自力の差、サーヴァントは人間に太刀打ち出来る存在では無いのだ。 無論、右腕に寄生生物を宿している泉新一でさえ目の前の男には遠く及ばない。 戦うだけ無駄だ、勝ち目など最初から存在していない。勝利へ辿り着く因子が不足している。 それに泉新一と男は主従の関係だ。命を殺り合う関係ではなく味方。 仲良しごっこで手を取り合う方がまだ好ましい。 「此処は城じゃねぇ、転生だの何だのあるだろうが俺にはどうでもいいんだ。 テメェの右腕がキモかろうと、テメェ自身が怪物でも関係ねえ。 でもよぉ……俺をこんな場所に招いたんなら樂しませろ。せめてもの、って奴だ」 男は言葉から察するに快楽を求めているらしい。その部類は自己満足、推定するに戦闘だろうか。 彼が言う城とは不明だがサーヴァントとして限界しているには不服があるようだ。 願いを叶える機会だと言うのに。 「……願いが、叶う?」 泉新一の脳内に齟齬が発生する。言葉と記憶と情報が反発しあう。 願いが叶う、紅い月、聖杯戦争。そうか、俺は参加していて権利を持っている。 『シンイチ、まさかとは思うが君は信じているのか?』 「い、いや。そんなワケ」 「目が泳いでるぞガキ、テメェの腹ン中にァ野心とか野望ってモンが無えのか?」 『耳を貸す必要は無いぞ、馬鹿な事は考えるな』 「俺は願いっつーか、まぁあるって事にしとくか。ソレを果たすのは俺自身だ、聖杯なんぞの出番何かありゃしねえ」 男は放つ。願いは己の手で掴み取る事象だと。 本来言葉に着飾らない彼だがその発言は英霊の志に近い。 多くの人間を殺してきた彼だが戦闘においては彼なりの美学と呼べばいいだろうか。 仲間意識も強く礼も辨えているのだ、之に関してならば彼は英霊の座に居座るだろう。 「シュライバー……テメェに言っても解ンねぇと思うけどよ、こうして存在してんだ。 ならさっさと終わらせて俺は俺のケリを付けて来る。もう一度何てくだらねぇ戯言じゃねぇ。 あの時俺は勝った、けどアイツは生きていて死んだ。だが、俺は英奴に、アイツも、だ。つまり」 男は紡ぐ。 彼は昔、シュライバーと呼ばれる気に喰わない奴が居た。 何処か似た匂いを発しその境遇も互いに血と狂気が漂う最終列車の塵箱。 底辺に溜まる社会の輪に馴染めない屍は互いを憎き殺すべき対象と見なしていた。 その狩りは他者の介入より中断、屍は黄金の獣に魅入りその忠誠を誓う。 しかし問題があった。 男の宿敵は白騎士《アルベド》の称号を手にした。男ではなく。 その力は男だって認めている、だが称号に釣り合うかは別の話であり、譲れない物がある。 幾つかの年月が過ぎた時、彼は黄金の獣に許しを受け、黒と赤の騎士から言葉を受けとり白騎士の座を争った。 その先に待っていたのは――なにも今此処で男の生前を解説しても意味は無いだろう。 泉新一に伝わるわけでもなく、彼には正直の所、男の過去などどうでもいいのだ。 事実ミギ―は男の背後から斬り掛かっていた。 「つまり、だ。俺は別に遊んでもいいけどよぉ、チンタラしてる暇は無いってワケだ。 だからよォ、テメェが俺のマスターなら足を引っ張んな。癪だがテメェが死ねば俺も消えンだよ」 『――ッ!』 背後の攻撃を振り向く事無く掴み取る男。 そのまま力を強め握り潰さんと威嚇地味た行為をする。 泉新一は走りだす。ミギ―が殺されてしまう。ならば。 廃墟の欠片を握り締め男に振るう、素手で殴るよりも数倍マシだろう。 「頭使うってのは評価してやるよ」 「う、あぁ!」 男は掴んだ右腕を振り回す。 右腕はミギ―である。しかしミギ―は泉新一の右腕である。 彼らは男の片手一つに振り回され宙を泳ぐ。止める術など無く――。 「ぐ――ッ!!」 大地に轟くは泉新一の着地音、着地の表現など生温く落下と言っても差し支えない。 痛みに表情を歪めるが黙って寝ている訳にもいかないため立ち上がる。 「俺は聖杯戦争なんて知らない、こんな所に居る必要はない!」 「だったらテメェはどうやって帰るつもりだ。 電車か? 徒歩か? 迎えでも呼ぶのか? あァ? 此処はテメェ等の東洋の島国だろ?」 『シンイチ、挑発に乗るな。今から私があの男に攻撃を加える。 その間君は少しずつ後退するんだ。そして私が合図をしたら全力で走れ、此処から離脱する』 「お前らみたいな寄生生物を俺は許さない……! お前は彼奴等と同じだ、人を殺す事に感情を持たない彼奴等とォ!!」 『シンイチ! 吠えても何も起きない』 「ガキ、テメェは思ったよりも早く死にてぇらしいな。少し眠ってろ」 その時泉新一は奇妙な事象を目撃した。 紅い月を見てから全てが奇妙だがこの瞬間は最大風速を更新する。 血だ。血の匂いが強烈に男から発せられる。 彼の身体の表面を塗り上げるように血生臭く、いや、之は血だろうか? 血に似た何かかも知れない。しかし重要な問題ではなく、男の行動事態が危険であることに変わりはない。 「ただの人間相手のタイマンにこれ使う何て普通は在り得ねえからな。 テメェの魂、俺が吸うに値したワケじゃねぇぞ。 聖杯戦争って奴を過ごす相棒になんだろ? だったら少しだけ見せてやる、涙流しとけよクソガキィッ!!」 血、血、血。 空気が軋む。 男から発せられる血の匂い、関わりたくない程の狂気。 滲み出る其れ等は生物の総てを嫌悪させ、黒い血が――爆裂するように跳ね上がった。 「これは……寄生生物?」 『いや違うぞ。私達の同類ではない。だが男の右腕の血は生きている、のか?』 人体から生えたソレは杭の形をした奇形の植物とでも呼ぼうか。 しかし葉もなければ花もなく、実もなければ樹木もなく、勿論根も存在しない。 その植物に必要なのは水でも養分でも日光でもない。 血だ。悍ましい程の狂気に彩られた黒い血、それが男の殺意の具現である牙。 「ミギ―、出来るか?」 『出来なければ死ぬ。私も君も此処で死ぬだけだ。それは望んでいないだろ?』 「お前……ごめん、な」 「どうよガキ、感想は?」 「最高に気分が悪い」 「そっちの右腕は」 『興味深いと思う。しかし近寄りたくはないな』 「そうかいそうかい、なら――」 男が何かを仕掛ける。 右腕に生えた杭を飛び道具のように泉新一へ放つ。 対処しようとするもどう防げばいいのか。しかしそんな事を考える刹那など無く。 「ッ!!」 【気付けば杭が足と大地を繋ぐように刺さっていた】 その動きを泉新一とミギ―は視界に捉えていたが反応するまでもなく攻撃を喰らった。 ミギ―は弾き返そうと行動をするも杭はその動作よりも速く泉新一の足を貫いた。 『大丈夫かシンイチ!』 安否の声に黙って首を振る。痛くないと言えば嘘になる。 だが弱音を吐いた所で目の前の男が収まることは無いだろう。 従者ならば主に従って欲しいのだが生憎野蛮な獣を引き当てたらしい。 愚痴の一つや二つ、零したくなるが言葉が出て来ない。気力が吸われるかの如く意識が遠のいて行く。 薄らと見える男の周りは更に異形と化していた。 男を中心に大地や廃棄物、コンクリート。総てが消えて行く。 その現象は枯渇。男に生えた杭は総てを吸い尽くす邪悪の樹。 名を闇の賜物《クリフォト・バチカル》英霊として派生された世界で語り継がれるヴラド三世の結晶化した血液。 吸血鬼伝説を語る代名詞の血はその性質も吸血鬼のように総てを吸い尽くす邪悪の樹。 泉新一の足に刺さっている杭も例外なく同一の存在であり彼の生気を吸い付くさんと吸収している。 「ミ、ミギ―……コイツを頼む」 気絶寸前にまで追い込まれている泉新一は右腕に声を掛ける。 この杭が犯人ならば。除外すれば彼は何一つ吸われないで済むだろう。 無論一度開いた穴。杭を除外すれば大量の血が流れることになるだろうが構っている場合ではない。 「カハッ! まだ意識あンのか、少しは骨見せてくれるじゃねぇか。 いいぜ、鞘替えは待ってやるよ。テメェが目を覚ましたらそっからはお樂しみの聖杯戦争だ。 お前が何を願うかは自由だけどよォ、俺の邪魔だけはするな。したらテメェの存在ごと消すぞ」 男は泉新一を生かすらしい。そもそも彼が死ねばサーヴァントである男も消えるためその行動を実行することは不可能に近い。 【しかし男には例外のルールがあるのは別の話】 認める段階まではいかないがそのタフさは少しだけ評価してやる。そう言い放った。 『今から杭を抜く、踏ん張れよシンイチ』 ミギ―は身体を延ばし杭を抜かんと触れる。 『私まで吸おうと言うのか……ッ』 杭が総てを吸い尽くすならば。寄生生物であるミギ―も例外ではない。 時間を掛ければ掛けるだけ泉新一とミギ―の生気は杭に吸われ尽くされ男の糧となる。 「お前は……何がしたいんだ」 「決まってんだろ、勝つんだよ」 「勝つ……? そのためなら人間を殺したっていいのかよ、なぁ!? 何が聖杯戦争だ、どうせお前らみたいな糞野郎共を満足させるためだけのくだらない宴なんだろ!」 泉新一の言葉は八つ当たりに近い。 何故自分だけ毎回面倒事に巻き込まれるのか。平穏な世界から離れるのか。 右腕も、クラスメイトも、母親も、あの子も、人間も、全部、全部、どうして離れていくのか。 自分が何をしたんだ、何がいけない、この状況を招いたのは自分じゃない。 見ているか聖杯。お前に願いを叶える力があるなら応えてみせろ。 「紅い月を見た奴は月に招かれて願いが叶うんだろ!? ならやってみろよ! 此処は月、あの時俺が目撃した紅い月なら! 今すぐ俺を開放して、総てを元に戻して帰ろせろォ!!」 魂の叫び。 何一つ飾っていない本心からの叫び。 聖杯が願いを叶える願望器ならば総てを元に戻せ。 この身体も、母親も、日常も、何もかも総てを。 ミギ―との別れに感情を抱かないと言ったら嘘になる、それでも。 「クク、ハハハハハハハハ!!」 聖杯は何一つ応えるこなく、変わりに答えるは男の笑い声。 面白い事があったのだろうか。泉新一の叫びにコメディなど欠片も無い筈だが。 男は笑う、これ程笑う必要が在るのか。そう思える程に。 「ガキ、テメェは今【紅い月】って言ったよな? 【紅い月】って言ったよな」 男は笑いを終えると挑発するように尋ねる、紅い月、と。 泉新一は何が面白いか理解出来ない、しかし紅い月は事実であり彼は月を見てからこの場に招かれた。 否定出来ない事実であり無言で首を縦に振る。この時ミギ―が足に刺さっていた杭を抜き彼らは平常に戻る。 「真ん丸輝く御月様が願いを叶えるってかァ! コイツは傑作だ、あぁ、やべぇな、おい。 いいねぇ、俺の夜はまだ終わらないってことか。こんなくだらねぇ場所に呼ばれた時はクソと思ったけどよォ。 その言い伝え……それに英霊ってのは考えりゃワケの解かんねえ奴もゴロゴロ居んだろ? ガキ、テメェの命は更に伸びた」 男は返答も待たずに勝手に独り、まるで歓喜に浸るように空を仰ぐ。 聖杯戦争を。彼の発言で表わすならば樂しむ事に決めたのだろうか。 しかし長引くことは泉新一にとっては迷惑以外の何者でも無く、願い下げである。 「いいぜ、だったら見せてやる。 出血大サービスって奴だガキ。涙流して感激しろよ、なぁ」 テメェが今から見る夜は俺だけの夜、カズィクル・ベイの――夜だ」 そう呟いた男――カズィクル・ベイから杭の時と同じように感じたくもない空気が発せられる。 その言葉の真意は不明、吐き終えると同時に静かになったのが印象に残る。まるで嵐の前兆だ。 「コイツ、狂ってる……何を言ってるんだ」 『今更かシンイチ、だがどうする。君の命は伸びたらしいがあのベイと名乗った男は何かするぞ』 命を伸ばす、この発言を捉えるならば死なない事と同意義だろうか。 少なくともベイが聖杯戦争を樂しむならば魔力の供給源となる泉新一を殺す事はないだろう。 「お前、何をするつもりだ」 「言ったろ、俺だけの夜を見せてやるって。ただの人間風情が俺の気まぐれとはいえ薔薇の夜を拝めるんだ、死ぬまで持ってけ」 『――! シンイチ、その男から離れろ!』 泉新一が答えを聞くよりも速く。 ミギ―が移動を促すよりも速く。 カズィクル・ベイはこの世界を己の夜に塗り潰す。 「遅え―― ――月が紅い理由―― ――教えてやるよ」 総てが遅く、総てが運悪く、総てが因果の元へ。 ベイから放たれる殺気は鬼の如く、泉新一がこれまで相手にしてきた総ての虐殺器官を凌駕する。 そしてこれから紡がれる言葉は夜に羽ばたく悪への階段。 「Wo war ich schon einmal und war so selig かつてどこかでこれほど幸福だったことがあるだろうか」 聞こえる言葉はドイツの物、泉新一には聞き慣れない言葉だ。 その意味を理解することは彼に出来ない、出来ることはただ聞くだけ。 気になるとすれば【月が紅いワケ】だ。ベイは今から何を行うと言うのか。 ミギ―は逃げろと言った。その言葉は解る。此処は危険だ。しかし。何故だろう――足が動かない。 「Wie du warst! Wie du bist! Das weis niemand,das ahnt keiner! あなたは素晴らしい 掛け値なしに素晴らしい しかしそれは誰も知らず また誰も気付かない」 気のせいだろうか。 疲れの影響からか一瞬だけ。ほんの一瞬だけ夜が暗く見えた。 夜だから暗いの当たり前だ、それを差し引いても泉新一の瞳には夜が深く見えた。 「Ich war ein Bub . da hab ich die noch nicht gekannt. 幼い私はまだあなたを知らなかった Wer bin denn ich? Wie komm denn ich zu ihr? Wie kommt denn sie zu mir? いったい私は誰なのだろう いったいどうして 私はあなたの許に来たのだろう War ich kein Mann,die Sinne mochten mir vergeh n. もし私が騎士にあるまじき者ならば、このまま死んでしまいたい Das ist ein seliger Augenblick,den will ich nie vergessen bis an meinen Tod. 何よりも幸福なこの瞬間――私は死しても決して忘れはしないだろうから」 泉新一は黙ってカズィクル・ベイの謡を聞く。 思考を停止している訳ではない。 『シンイチ! 聞こえているのか、シンイチ!』 しかしミギ―の声は彼の耳には届かない。総てが遠く感じるのだ。 その答えは簡単だ。この夜はあの杭と同じく総てを吸い尽くす闇の夜だから。 この夜の主役はカズィクル・ベイだ。 聖杯戦争だろうがこの夜の時だけ、彼以外の存在は総て脇役に成り下がる。 之が世界、彼が望む深淵の闇、憧れ、己が法で世界を塗り潰さんと溢れ出る渇望。 「Sophie,Welken Sie ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ Show a Corpse 死骸を晒せ」 更に夜が深くなる。 鼓動する夜気、揺らめく闇夜。 総てを包み込む夜から感じるのは暖かい光ではなく冷たい闇。 「Es ist was kommen und ist was g schenn,ich mocht Sie fragen 何かが訪れ 何かが起こった 私はあなたに問いを投げたい Darf s denn sein? ich mocht sie fragen warum zittert was in mir? 本当にこれでよいのか 私は何か過ちを犯していないか Sophie,und seh nur dich und spur nur dich 恋人よ 私はあなただけを見 あなただけを感じよう Sophie,und weis von nichts als nur dich hab ich lieb 私の愛で朽ちるあなたを 私だけが知っているから」 言葉が進む度に夜が深くなる。 泉新一は思う、之はゲームや漫画で言う所の詠唱なのだろう。 ならば終わる前に止めたいが、既に彼の力は先程の杭に吸い尽くされている。 黙ってベイの夜が訪れるのを待つしか出来ないのだ。 だがミギ―はまだ動ける。 この状況でベイを放置するのは危険過ぎる。 その触手を刃物に変え彼の首を斬り落とさんと猛威に動き始める。 「Sophie, Welken Sie ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ」 ――もう終わるから黙ってろや。 ベイは刃を掌で抑えこむと最後の言葉を紡ぐ。 「Briah――Der Rosenkavalier Schwarzwald 創造――死森の薔薇騎士」 紡がれた呪言は世界を奈落へと誘う彼の叫び。 夜に夜を重ねる世界で誰も感じたことのない深淵。 総てが軋む、歪み、吸い尽くされ主たるベイを祝福する。 『遅かったか……』 「ククク、ハハハハハハハハハハハ! どうだコイツが俺の世界、総てを吸い尽くす薔薇の夜だ」 之が世界、総てを吸い尽くすのが世界の理と成り果てたベイの渇望。 夜が主役、夜に英雄となる吸血鬼、その力を今此処に具現化した。 夜を更に夜で重ねた闇、不快の塊である世界が総てを包み込む。 呆気に取られる泉新一、総てが規格外過ぎる。 戦力も、理も、世界も。どれも人間や寄生生物にさえ出来ない技だ。 之がサーヴァント、カズィクル・ベイの能力だと言うのか。 「感激して声も出ねぇのか? なら上を見てみろよ、なぁ――アレ、何だか解るか?」 ベイに促されるまま泉新一は空を見上げる。そして世界の闇を垣間見るのだ。 之は何だ、何だ、何だ。何がどうなっている。 総てを吸い尽くす薔薇の夜。ならば空に浮かび上がるアレは何だ。誰か説明してくれ。 聖杯戦争――招かれた嘘か本当か解らない謎の宴。正直な話、信じる方が難しい。 それでも願いを叶える権利は魅力的であり、日常を懐かしむ泉新一にとっては唯一無二の機会だった。 他人を殺す事など、人間を殺す事など彼には出来ない。それでも夢を見るに値する。 「あ、あぁ……ああああああああああああああああああああああ」 叫ぶ泉新一、笑うカズィクル・ベイ。 この夜の主役は主である人間ではない。支配するカズィクル・ベイだ。 故に総てがベイのために動いており、この状況でさえ薔薇の夜は泉新一とミギ―の総てを吸っている。 其処に追い打ちを掛けるように空で笑う月が一つ。紅く染め上げ夜を彩る月が一つ。 「どうだ、ガキ。テメェが言ってた紅い月だぜ? 感動して叫ぶことしか出来ねえのか? ってああ、そうだそうだ。お前さっき言ったよな? 紅い月が願いを叶えてくれるって。 で、どうだ? 叶ったか? テメェの願いは叶ったか? なぁ教えてくれよォ。気になんだよ。 なァマスター、聞こえってっか? 紅い月は願いを叶えて――ハハッ、アハハハハハハハハハハハ!!」 空に浮かぶは紅い月。都市伝説の紅い月。総てを叶える紅い月。 この月は誰が用意した。男だ。この男だ。カズィクル・ベイだ。 ベイは願いを叶えるのか。到底思えない。なら誰が願いを叶えるのか。それが聖杯。 ならば聖杯とは何だ。誰か教えてくれ。俺の希望を砕かないでくれ。助けてくれミギ―。俺はどうしたらいい。 誰も泉新一の問に答える事は無く、ミギ―もただ無言で状況を受け入れるしかなかった。 闇に響くは主であるカズィクル・ベイの笑い声。 主以外の総ての存在が絶望する中、泉新一の聖杯戦争が始まった。 【マスター】 泉新一@寄生獣 【マスターとしての願い】 ―― 【weapon】 ―― 【能力・技能】 右腕にミギ―と呼ぶ寄生生物を宿している。姿を鋭利な刃物に変質させ総てを斬り裂く。 また寄生された影響からか泉新一の身体能力はオリンピック選手を遥かに凌駕する。 【人物背景】 普通の学生だった彼はある日寄生生物が自分の右腕に侵入したことに気付き必死で抵抗を行った。 夢だと思っていが現実であり彼の右腕は寄生生物と同一となり名をミギ―として不本意ながら相棒となった。 生活していく中で世の中に寄生生物が潜んでいる闇を体験していき彼自身もまた戦闘に巻き込まれる。 その中で人間が死んで行き彼の母親も寄生生物に殺され、彼の心は深く、深く閉ざされていくことになる。 【方針】 ―― 【クラス】 アサシン 【真名】 ヴィルヘルム・エーレンブルク@Dies irae -Acta est Fabula- 【パラメーター】 筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C+ 幸運E- 宝具A+ 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:D サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。 【保有スキル】 エイヴィヒカイト:A 人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。 本来ならばこの存在を殺せるのは聖遺物の攻撃のみだが聖杯戦争では宝具となっており、彼を殺すには宝具の一撃が必要となる。 また、喰った魂の数だけ命の再生能力があるが制限されており、魔力消費を伴う超再生としてスキルに反映された。 A段階に達すると己の渇望で世界を創造する域となる。 直感:B つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。 戦闘続行:A 呪い:A ある人物から彼の二つ名である魔名と共に送られたもの。 その内容は「望んだ相手を取り逃がす」 本人が望めば望むほど、その相手は横槍などにより理不尽に奪われていく。 【宝具】 『闇の賜物(クリフォト・バチカル)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1 エイヴィヒカイトの第二位階「形成」に届いた者にしか具現化出来ない物 彼の其れは『串刺公(カズィクル・ベイ)』の異名を持つワラキア領主、ヴラド三世の結晶化した血液が素体。 能力は 「血液にも似た赤黒い色の杭を全身から発生させる」。 この杭は、突き刺した対象の魂や血を吸収し、所有者に還元する効力を持っている。 飛び道具、武具、空中での移動など様々な用途に応用出来る。 この聖遺物との親和性は他のエイヴィヒカイトとは群を抜いている。 クリフォトとはカバラの『生命の樹』と対をなす『邪悪の樹』の名であり、バチカルはその最下層を示す。 『死森の薔薇騎士(ローゼンカヴァリエ・シュヴァルツヴァルド)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000 エイヴィヒカイトの第三位階、自身の渇望の具現たる「創造」能力。 元となった渇望は 「夜に無敵となる吸血鬼になりたい 」 。発現した能力は「術者を吸血鬼に変えて、周囲の空間を夜へと染め上げ、効果範囲内に存在する人間から力を吸い取る」こと。 渇望通り、吸血鬼と化して人間から精気を吸い上げる能力である。 発動すると周囲一帯が固有結界に似た空間に取り込まれ、例え昼であっても強制的に夜へと変わる。もっとも、夜時間帯に重ねがけした方が効力は格段に上がる。 この「夜」に居る人間は全て例外なく生命力をはじめとした力を吸い取られ、奪われた力の分、 この空間の主である吸い尽くした力を己の糧とし、それを抜いても己のを強化する。また、夜空には紅い月が浮かび上がる。 相手を弱体化させ己を強化し続ける卑怯な理だが弱点として【吸血鬼の弱点ソノモノが彼の弱点となる】 『???』 ランク:? 種別:? レンジ:? 最大捕捉:? 彼の中に眠るナニカ。性別、数――総てが不明。 【人物背景】 聖槍十三騎士団第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ。白髪白面のアルビノの男。 その体は日光を始めとした光全般に弱く昼はほとんど出歩かないが、逆に夜の間には感覚が鋭敏になるという吸血鬼じみた体質を持ち、 それを自らのアイデンティティとしている。戦闘狂であり彼の歩んできた道には屍の山が築かれている。 元は貧困街の出身であり父と姉の近親相姦で生まれ、「自分のちが汚れているならば取り替えればいい」と感じる。 その後彼は親を殺しこれまでの人生とは別に暴力に溢れた生活を送るようになる。 其処で遭遇したのが白き狂犬、其処で出会ったのが黄金の獣。そして彼の人生は世界の因子に成り得る奇妙な物語に巻き込まれる。 なお、仲間意識は強く同じ騎士団の仲間を家族のように思っている。 【願い】 樂しんで城へ帰還する。